86歳、やっとひとり ~ 母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし ~

「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

#3 インフルエンサー

母の頭に”終活プラン”のイメージが
降りてきた瞬間を、よく憶えている。


私が当時一緒にワインを飲み歩いていた
年上の友人の翻訳家女性が、
出版社からの依頼で
自身について書いた本を出した。


母上の自宅売却に伴って実家を出ることになり
50代にして自由な一人暮らしを謳歌する。
今から思えばまさに
「大人のおひとりさまエッセイ」
の先駆けとも言える、
颯爽とお洒落なエッセイだった。


その中で、母上はある日
「ここにお座りなさい」と友人に言うと、
自分はこの家を売って
そのお金でホームに入るから、
あなたはここを出て好きなようにしなさい。
そう申し渡したという。


相談でもなければ、要望でもない。
すべてはもう決めた事。


母上にとっては「報告」。
そして同居していた娘への「号令」
といったところか。


さて、その話を我が母にしたところ、
「お見事!私も最後はそうしよう。」
強く言い切ったのが60代前半だった。


以来ことあるごとに
「私もOさんのお母さんのように」
を繰り返し。いつしか
「最後は○○山が見えるホームで暮らすの」
とビジュアル付きで、“自分事”に昇華させていた。


そして見事な“有言実行”。


私は母にインスピレーションを与えてくれた友人と
ロールモデルたる母上に感謝を込めて、
このブログのタイトルを、友人のエッセイからの
オマージュにさせて頂くことにした。