86歳、やっとひとり ~ 母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし ~

「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

#17 シニアもいろいろ


【ここまでの展開】

「最期は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母がついに行動に出た。気に入った施設も見つかり、いよいよ母の”移住”が始まる。


それにしても、母のこの盛り上がりは何なのだろう!? ホームに入ることに、ほとんどワクワク興奮している。
世にいう「老人ホーム入居」が多かれ少なかれ”姥捨て”の悲哀や罪悪感の色を帯びているのに対して、彼女のノリはほとんど「上京して初めての一人暮らしをする女子大生❤️」のそれだ。


勝手な想像だが、結婚を機に上京して以来常に家族と生活を共にし、その世話をしてきた彼女にとって、介護付き高齢者マンションとは言えそこでの「生まれて初めての一人暮らし」が嬉しくてしょうがないのだろう。また向かう土地が、懐かしい故郷へのIターンだとすれば尚更だ。好きな時間に起きて寝て、食べたいときに食べる。夕飯の献立を考えることもない。etc.
新しいライフスタイルへの期待に膨らむ母の移住プロジェクトは、なんだか「新生活応援フェア!」のようになってきた。


一方、リュウコばちゃん。
生涯独身の”おひとりさま大ベテラン”は、仕事をし、趣味を楽しみ、ジム友とおしゃべりしたり旅行に行ったりと、自身の「コミュニティ」を作りながら生活を楽しんできた。そんな彼女にとって移住で今の環境を離れるのは、長年掛けて作り上げた”財産”を失うことだ。社交的なあの人のこと、向こうでも友達はできるだろう。でも、今ある友人関係を失うことには変わりない。
かつては移住プロジェクトの”リーダー”でもあった彼女が、体の不調をきっかけに生活環境を変えることのリスクに足がすくんでしまったとしても仕方がない。


私の”おひとりさま”飲み友達にその話をしたところ、即座に「わかるよー。そっちが普通でしょう。」
はい、その通り。ホーム行きにワクワクしている誰かさんの方が”宇宙人”です。
母というよりは、まったく以て「リュウコばちゃん」の後をゆく私と友人は思わず自分達の先々を考えてしまった。インターネットで人間関係の距離感も変わってきている私たちとは言え、独身者にとって身近ですぐに会える友人の存在は大きい。


「だったら早めに”終の棲家”を確保して、元気なうちに第二第三のご近所コミュニティをつくるっていうのもアリか。」そんな考えも私の頭に浮かんだ。まあ、いろんなアイデアや選択肢を持っておくのは悪くない。人生色々、シニアもいろいろ、眺める未来はカラフルな方がいい。