86歳、やっとひとり ~ 母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし ~

「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

#30 タッチパネル


【ここまでの展開】

「最期は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母がついに行動に出た。気に入った施設も決まり、引越しを経ていよいよ母の”新生活”が始まった。


ホームに入居以来、母とのコミュニケーションツールになった「スマホ」。”通話機能”しか使っていないにも関わらず、予想外のトラブルに驚かされる。


「『ポン!』が難関なのよ、『ポン!』が。」
母に使い方を教えた妹によると、タッチパネルに「タッチする」指先の感覚が母にはイマイチつかみにくいという。先日ひと月半ぶりに母に会いに行った際に試しに私に電話してもらうと、こちらが止めるまでずーっと通話ボタンを押し続けるのに笑ってしまった。


「ミウちゃんには掛かるのに、あんたのところにはダメなのよ。何でかしら?」
「だからポン!って軽く触るだけでいいのよ。軽く。」
妹には軽いポン!タッチが出来るのに、私相手だと指先に力が入るのかと思うと何だかおかしかった。長く一緒に住んでいた妹への気安さなのか、相性なのか。只それだけでもない気がする。


昔、何の会話の流れか、母に「あんたといると、頑張ってないといけない気がする。」と言われたことがある。他愛ないおしゃべりだったが、妙に腑に落ちる気がして記憶に残った。なんとなく「私は”頑張って”育てられちゃったんだよなあ。」そう感じた。


頑張って育てられた子供は、頑張って褒められようとするし、その頑張りを親にも求める。
「第一子」には多少なりとも、そんな理不尽があるんじゃないだろうか? あとはもちろん個人差。年とってゆく親にとっては、やりにくい相手かも知れないし、こちらも悲しいかな親の老いを受けいれる度量の小ささを認めざるを得ない。まあ、それを認めた上で上手くやっていくしかないんだろう。


お互いあまり頑張らず、相手にも求めず。気楽な遠距離ライフを楽しむのが何より。
お母様、電話はチョイチョイ私から掛けるから大丈夫ですよ。
急ぎの御用のときは、妹ミウちゃんに「ポン!」と掛けてくださいな。