86歳、やっとひとり ~ 母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし ~

「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

#13 ホーム見学ツアー(その3)

【ここまでの展開】

「最期は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母からついに号令が下った。母私妹の3人は、2019GWに「ホーム見学ツアー」を決行する。


昨日見学した2つの施設の共通の印象。
ありがたいのは、入居者の自由を尊重するというか、ほっといてくれるところ。ただ、母には施設の環境としても雰囲気としても、もっと「明るく」て「ヌケの良い」ところで暮らして欲しかった。母や妹も同じ思いだったろう。贅沢な望みかもしれないが、我々は希望を持ってツアーを続ける。


見学3件目。
さて昨日に続き見事な五月晴れのもと、私たちはアポに向かった。今日訪問する2ヵ所も、介護度「低」と「高」の施設の組み合わせ。2件は同じ経営母体による”系列施設”だ。道路から一歩入ったところのコンビニ駐車場の先に施設が現れた。
おー、新しくてキレイなマンションではないの!
新しいのは当たり前、オープンから半年しか経っていないホヤホヤの“築浅物件”なのだ。


エントランスを入ってすぐ、我々のモードは「老人ホーム見学」から「新築マンション内覧会」に切り替わった。吹き抜けのレセプションと広めのロビー、そして光が溢れる大きな窓。ホテル好きな我が家が泣いて喜ぶ、品の良いホテルライク仕様だ。「こんなところに住みたい💗💗」
母の目も輝いている。あとはネガティブ要素が出て来ないことを祈るばかりでだ。


マネージャーの男性が現れ、私たちは別室に通された。ここから先はほとんどマンション内覧会の展開だ。唯一違っているのが、入居者へのケアサービスの内容とそれを含む費用説明といったところか。


詳細に入る前に館内ツアーいただけるということで、私たちはその部屋を出て価格別にいくつかのお部屋を拝見した。マンションギャラリーよろしくインテリアが整えられたお部屋は明るく美しく、そして特に母の予算にも合うXタイプのお部屋がとても使いやすい間取りと十分な広さであることが確認できた。キッチンも広く、バス・トイレ、いずれも最新のマンションと変わらない。「一人にはもったいないわ~」とか言いながら、母は自分の家具の並べ方の話など始めている。


続いて、共有スペースとしての、ダイニング、大浴場、洗濯場、etc. こちらは”リゾートマンション”の印象だ。いずれも明るく、ヌケの良い空間が嬉しい。こんなマンションなら私でも住みたいワ。それが地方都市とは言え「年金範囲」で叶うなんて、母よあなたの世代が羨ましい。


私は先達マナカちゃんからのヒアリングを思い出していた。
”「実績」を気にするより、「直感」を大事にした方がいいと思うよ〜。古くからのところは、サービスも古かったりするし。新興勢力はその分新しいやり方で頑張ってたりするから~。”


たしかに。。。
医療法人系の比較的新しい高齢者住宅事業とは言え、その分ハードもソフトも今風に魅力的に作られているのだ。その”風通しの良さ”が、建物全体やスタッフの雰囲気に満ちている気がした。


そして一番上のフロアーの多目的スペースに入った時、私たちは息を呑んだ。
二方向に開かれた大きな窓いっぱい、5月の青空を背景に、そこに母が愛してやまないふるさとの「〇〇山」の美しい全景が広がっていたのだ。


母の晴れやかな笑顔が「ここに決まり」と言っていた。

#12 ホーム見学ツアー(その2)


【ここまでの展開】

「最期は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母からついに号令が下った。母私妹の3人は、2019GWに「ホーム見学ツアー」を決行する。



2件目訪問。


1件目を出て車で2~3分のところに次の施設があった。


こちらは要介護度高めだけあって、お見かけする入居者の方も年齢高めで車イス利用も多く、「あー、老人ホームに来たなあー」の感慨がある。
それでも「むーすーんで、ひーらーい~て♪」の声が響いていないことは、先ほどの施設と同様。それって何なんだ?我々の思い込み、それとも 偏見なのか?
大テーブルで車イスのおばあさんが、一人静かにクレヨンで絵を描いていた。大輪の赤い花の見事な絵だった。


居室は簡単なキッチンとトイレ設備付きの部屋もあるが、お風呂は全て共同。キッチン・バス・トイレ全く何もない部屋も多い。要は“すべて人の手を借りる”ことを前提とした施設ということだ。


旅の疲れもあり我々のテンションも下がってきたので、早々に失礼することにした。
「まっ、ここはママには早いわよねえ~。」
「部屋にトイレが無いなんてムリだわあ。私夜中に2回も起きるのに。」
「でもここの皆さんも、きちんと身ぎれいにしてたよねー。りっぱだわ。」
「おばあさん、絵上手だったねー。」


3人共、何となく明るい声を出そうとしている気がした。
「私達には関係ない」そんな思いを確かめ合うように。。。

#11 ホーム見学ツアー


【ここまでの展開】

「最期は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母からついに号令が下った。母私妹の3人は、2019GWに「ホーム見学ツアー」を決行する。


出発の日はいいお天気だった。
カーシェアリングの青いハイルーフが旅の友。「パパもそうだったけど、わが家は“ハレ家族”よね〜。」母のいつものセリフと共にツアーはスタートした。
GW中というものの、道はさほど混んでいない。サービスエリアで休憩を取りながら、昼過ぎにはN県のその街に到着した。


2件、2件、1件と、二泊三日で5つの施設にアポを取っている。初日の見学は、要介護度「低め」と「高め」の2施設。
“こうゆうのって、最初が肝心なんだよなあ。。。“ 思いっきりテンションが下がるような施設で無いことを祈りつつ、助手席の私はナビをチェックする。


1件目。
駅から5分。道路沿いのそのホームはプレートが無ければ、“普通のこぢんまりしたマンション”といった外観だ。駐車場にクルマを留めて、おそるおそるエントランスを入ると、あたりは「し~ん」として人の気配がない。受付のベルを押して来意を告げると、女性の所員の方が「お待ちしていました」と出て来られた。


「お昼ごはん」の用意もありますが、まずは中をご案内しましょうか。
所員さんに付いて、我々はエレベーターを上がり居室が並んだ廊下を歩いてゆく。その間ほとんど人影を見ない。
“あれ?これってフツーにマンションじゃない!?”
「今の時間は皆さん、お部屋にいらっしゃることが多いんですよー」とのこと。


この施設では、各フロアの一画に食事スペースがあって、こざっぱり整った身なりのお年寄りがパラパラとお昼をとっている。一人で食事をしている方が意外に多く、たまにご夫婦らしいお二人連れも。


いずれにしてもあまりの静けさに、我々はちょっと面食らってしまった。老人ホームというものは、入るとすぐに広いホールがあって、入居者はスモックを着たスタッフさんのお世話を受けながら、一日中そこで「むーすーんで、ひーらーい~て♪」しているものとばかり思い込んでいたからだ。


空いているお部屋もいくつか見せて頂いた。キッチンがミニマムなのをのぞけば、フツーにシンプルな昭和のマンション。トイレが車イス用に広めなのと、各所に手すりが付けられているところに老人ホームを感じるくらいだ。廊下で車イスや歩行機の方ともすれ違った。介護が必要な人には、生活のお手伝いや通院のお世話も対応するという。


私たちは別室に用意された「入居者用ランチ」を3人で頂きながら、
「普通のマンションみたいだねー。びっくりしちゃった。」
「まあここなら、フツーに静かに暮らせそうだよね。」
「とりあえず、すべり出しとしては悪くないんじゃない!?」などと初心者らしい感想を述べあった。まあ不可も無いが、「入りたい!」という訳でもない。言葉にはしないが、3人共同じ思いだったと思う。「むーすーんで、ひーらーい~て♪」を強いられそうもないのは何よりだけど。。。


さて、ツアーは始まったばかりだ。「次行こ! ツギ!!」