86歳、やっとひとり ~ 母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし ~

「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

#11 ホーム見学ツアー


【ここまでの展開】

「最期は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母からついに号令が下った。母私妹の3人は、2019GWに「ホーム見学ツアー」を決行する。


出発の日はいいお天気だった。
カーシェアリングの青いハイルーフが旅の友。「パパもそうだったけど、わが家は“ハレ家族”よね〜。」母のいつものセリフと共にツアーはスタートした。
GW中というものの、道はさほど混んでいない。サービスエリアで休憩を取りながら、昼過ぎにはN県のその街に到着した。


2件、2件、1件と、二泊三日で5つの施設にアポを取っている。初日の見学は、要介護度「低め」と「高め」の2施設。
“こうゆうのって、最初が肝心なんだよなあ。。。“ 思いっきりテンションが下がるような施設で無いことを祈りつつ、助手席の私はナビをチェックする。


1件目。
駅から5分。道路沿いのそのホームはプレートが無ければ、“普通のこぢんまりしたマンション”といった外観だ。駐車場にクルマを留めて、おそるおそるエントランスを入ると、あたりは「し~ん」として人の気配がない。受付のベルを押して来意を告げると、女性の所員の方が「お待ちしていました」と出て来られた。


「お昼ごはん」の用意もありますが、まずは中をご案内しましょうか。
所員さんに付いて、我々はエレベーターを上がり居室が並んだ廊下を歩いてゆく。その間ほとんど人影を見ない。
“あれ?これってフツーにマンションじゃない!?”
「今の時間は皆さん、お部屋にいらっしゃることが多いんですよー」とのこと。


この施設では、各フロアの一画に食事スペースがあって、こざっぱり整った身なりのお年寄りがパラパラとお昼をとっている。一人で食事をしている方が意外に多く、たまにご夫婦らしいお二人連れも。


いずれにしてもあまりの静けさに、我々はちょっと面食らってしまった。老人ホームというものは、入るとすぐに広いホールがあって、入居者はスモックを着たスタッフさんのお世話を受けながら、一日中そこで「むーすーんで、ひーらーい~て♪」しているものとばかり思い込んでいたからだ。


空いているお部屋もいくつか見せて頂いた。キッチンがミニマムなのをのぞけば、フツーにシンプルな昭和のマンション。トイレが車イス用に広めなのと、各所に手すりが付けられているところに老人ホームを感じるくらいだ。廊下で車イスや歩行機の方ともすれ違った。介護が必要な人には、生活のお手伝いや通院のお世話も対応するという。


私たちは別室に用意された「入居者用ランチ」を3人で頂きながら、
「普通のマンションみたいだねー。びっくりしちゃった。」
「まあここなら、フツーに静かに暮らせそうだよね。」
「とりあえず、すべり出しとしては悪くないんじゃない!?」などと初心者らしい感想を述べあった。まあ不可も無いが、「入りたい!」という訳でもない。言葉にはしないが、3人共同じ思いだったと思う。「むーすーんで、ひーらーい~て♪」を強いられそうもないのは何よりだけど。。。


さて、ツアーは始まったばかりだ。「次行こ! ツギ!!」