86歳、やっとひとり ~ 母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし ~

「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

#47 敬老の日


いつものシューイチ電話中、思い出したように母が言う。
「そうそう、米寿のお祝いで区からお祝金8千円頂いちゃった!」


1月の誕生日でとっくに米寿は迎えたのに、今頃なんだっけ?と思ったら「敬老の日」だった。


シルバーウィークといっても、長い自粛生活と在宅勤務ですっかり忘れていた。
そこへもってきて「敬老の日」「米寿=数えで88歳」といわれると、ちょっとドキッとしてしまう。半年会っていないのと、毎週の電話の声があまりに元気でキレがよいので実感ないが、母も堂々たる後期高齢者。女性の平均寿命に達したということだ。


長寿家系だから平均寿命は軽くクリアするものと思っているが、それにしてももう90歳に近いとは…。
なんだか急に母の顔が見たくなってしまった。東京の自粛も緩和に向かっているようだし、10月下旬か11月には母のいるN県の高齢者ホームまで会いに行こう。


***


とりあえずお祝いのお花を注文し、連休で泊まりに来た妹ミウちゃんと旅行の予定を立てる。母訪問に併せ、私たちがテーマにしている「N県開拓!」の計画も怠りない。今年は松茸が豊作だそうなので、延泊して上田あたりに多くある「まつたけ小屋」というものに行ってみようか。山の中の体育館のようなお座敷でトコトン”松茸尽くし”が食べられるらしい。


「せっかくこっちまで来るんだから、帰りはどこか寄って遊んで行きなさい。」毎回そう言ってくれる母のお陰で、私たちのN県訪問は”お勤め”というより”プチ旅行”だ。「楽しむ」ことを大切にする我が家の家訓は、色々な意味で家族の風通しを良くしてくれている。


旅程も決まり、翌日「敬老の日」妹と二人で母に電話を入れる。
無事届いたフラワーギフトにご好評いただいたところで、さっそくもう一つのプレゼント=訪問予定を伝えたところが…


「あ~はいはい、近くなったらまた教えてちょうだい。私この後カラオケ予約してあるから、またねー。」


母は母で新しい場所で新しい友達や趣味を見つけて、毎日を楽しんでいるようだ。米寿の敬老の日のひとコマ。これ以上の娘孝行ってあるだろうか?


お母様、これからもこの調子で元気で楽しくお過ごしください。私も妹も苦笑しながら電話を切った。



【ここまでの展開】


「最後は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母がついに行動に出た。気に入った施設も決まり、引越しを経ていよいよ母の”新生活”一年目が始まった。