86歳、やっとひとり ~ 母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし ~

「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

#37 ボーイフレンズ


【ここまでの展開】

「最後は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母がついに行動に出た。気に入った施設も決まり、引越しを経ていよいよ母の”新生活”が始まった。


「パパの知り合いの中で一番好き!」  


母のお気に入りの「男性たち」がいる。
仮にAさんとBさん。父とは歳も離れているし個人的に深い付き合いがあった風でもないのに、昔から何かの折に登場しては我が家に好くして下さる。お仕事柄、父が亡くなった後の実家の売却~住換えでもお世話になり、母や私たちはとても心強かった。


たぶんAさんが「先生」と呼ぶ父のことを、「なんとなく好き」だったのだろう。
そしてBさんも上司だったAさんとウマが合っていたようだ。
そしてお二人とも、父よりさらに薄い繋がりの「母」のことを、これもまた何故か愛して下さっている。我が家とはそんな「相性」程度のユルさで繋がっていて、そこが何とも心地いい。


「私がスポンサーになるから、飲み会やってねー」
母の声に促されて、”移住報告”を兼ねた遅ればせの「新年会」を提案した。お二人とも「酒好き」ということもあり、おどろくほど速いメールのレスに私も妹もすっかり嬉しくなってしまった。魅力的な日本酒のお店まで用意して下さるというのだから猶更だ。


コロナのニュースがややリアルになってきた2月後半。”アルコール消毒”を言い訳に、初めて4人で集まった。N県にいる母はもちろん不参加だが、それは紛れもなく”母を囲む会”で、さらには大元である”父”を囲む会でもある。


「お母様も思い切りがいいというか何というか…。自分から決めてホームに入っちゃう人なんて聞いたことありませんよ。」
「先生は慎重な学究タイプだったけど、全然違って面白いご夫婦ですよねー。」
「それをまたサラーッと送り出しちゃうご姉妹もご姉妹だけど。」
「いやー、本人の希望最優先ですから~」


そこにいない父や母を肴に話は尽きない。母は私たちが集まって楽しくお酒を飲んでいるというだけで、自分も参加した気分を楽しんでいるだろう。いや、間違いなく参加している、というより「座の中心」だ。私はお付き合い下さったお二人の「ボーイフレンド」(と、勝手に呼ばせていただく)の存在がますます嬉しく、そしてますますお二人が好きになった。


別れ際、のん兵衛一行は渋谷の駅前で「自撮り」をした。いい年をした”赤ら顔”写真は、後日妹がプリントアウトして母を大喜びさせた。


「また飲みましょう!」
最期に挨拶というか”約束”のように言ってお二人を見送る。
そうだ、来年はぜひ「バレンタイン会」としてお誘いすることにしよう。もちろん次回も”父母”ご参加で。