86歳、やっとひとり ~ 母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし ~

「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

#5 番狂わせ


【ここまでの展開】

「最期は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母からついに号令が下った。2019GWに「ホーム見学ツアー」を決行すると言う。


「リュウコばちゃん」は母の三つ違いの妹で生涯独身。趣味も友人も多い、「おひとりさま」の大ベテランだ。ホームへの移住にも積極的で、紹介機関を通じて故郷N県の施設情報を集めてくれたのも彼女。「元気なうちに行って、ちょっとは向こうの生活も楽しまなきゃね」が口グセだった。


というわけで、ホームには「先発」で入ってもらい、場が温まったところでウチの母を送り込む。それが我が家にとってのまさに“理想的な展開”だった。


ところが「年寄りに明日はない」
今日の元気が、明日も続くとは限らないし、今できることが、次の瞬間どうなるかは
本人にもわからないのだ。


ここ数年、3、4か月に一度母のところに遊びに来てくれていたのが、“脚の痛み”を理由にご無沙汰になり、ホーム探しの話をしても“気持ちがそっちに行かない”と言い始めた。
少し気鬱になっているのか、頭ではわかっていても自分でもどうにもならないようだった。


「向こうに行っても何にもないし…」ついこの間まで、サ高住ライフをエンジョイすると
言っていた人の変わりよう。


もっとも、週に4日は近所のジムのお風呂に出掛け、
”ジム友”達とお喋りするのが楽しみな彼女のこと。話が具体的になるにつれ、今の生活を変えることに急に不安や寂しさを感じたとしても、不思議はない。