86歳、やっとひとり ~ 母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし ~

「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

#21 お引越し(その2)


【ここまでの展開】

「最期は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母がついに行動に出た。気に入った施設も見つかり、いよいよ母の”移住”が始まる。


母の引越し目前の10月中旬、台風19号が東日本を襲った。台風には縁の薄いN県にも大きな被害を及ぼし、ニュースはその流域に母が行くホームもある「C河」の氾濫の映像を流している。これには私と妹もショックを受けた。


施設に確認すると、その地域周辺に被害はないという。「N県と言っても広うござんすからね。」母はいたって落ち着いたものだ。とりあえず安心はしたものの、東京とN県をつなぐ高速道路の一部が土砂崩れで不通になっている。新幹線に至っては、全線の3分の1が浸水しそのすべてが廃車になるという。


引越しまであと2週間。交通が復旧してくれると良いのだが、遅れれば遅れるほど冬が近づき高齢の母には寒さが心配だ。
その後高速は全面復旧し、結局私たちの引越しに影響がないのは幸いだった。


母が行く前で良かった。


被災者の方々には申し訳ないが、正直な思いだった。どんなに安全の情報が入ってきたとしても、その時母がN県のC河流域に住んでいたとしたら、離れた東京から思う不安は何どれほどか。いくら遠距離通勤圏内といっても「新幹線」や「道路」が絶たれてしまえば、万一のことがあっても会いには行けないのだ。母がこれから向かおうとしている“地方への移住”の現実を実感する経験だった。